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ペアデザイン

Apr 27 . 2017

ラクスルでデザインを担当している中村です。

ラクスルに入社してはや半年が経ちました。 ラクスルでは、ここ最近は主にUCD(ユーザー中心設計)などを取り入れたUX活動やUI設計・プロトタイピングなどをしています。

さて、今日は先日実践した「ペアデザイン」についてお話ししたいと思います。


ペアデザインとは

「ペアプログラミング」はデベロッパーやエンジニア界隈ではよく耳にされることも多いかと思います。 私自身もデザイナーとしてエンジニアとペアを組み、一緒にデザインを実装するということを、ラクスルでのプロジェクトや以前勤めていた会社で経験しました。

その経験から ・ひとり作業による属人化を防ぐことができる ・ひとりよりもふたりのときのほうが集中力が増し、生産性もあがる ・ペアを組んだ相手から技術・手法を学び、吸収する機会が増える

といったメリットがあると感じ取りました。

そこで、もしデザイナー同士でペアリングすれば、同じようなメリットを得ることができるのではと思ったのが「ペアデザイン」に注目したきっかけです。

その名の通り、ふたりでひとつのデザインに取り組むイメージを描いたものの、この時点ではどのようにやれば効果的に進められるかはまだわかりませんでした。

ペアデザインの進め方

ペアデザインを実行するにあたり、そもそも前例があるのかを調べました。その結果、IT参考書でおなじみのO’reillyのサイトで「Pair Design – Better Together」という無料で配布されているeBookにたどり着きました。この本ではコンテンツ量としては少なく、ブログ風の軽めな紹介本ですが、Cooper、Pivotal Labs、GreatSchools、Lab Zeroなどシリコンバレーでは有名な企業が実践している様々なアプローチを紹介しています。

http://www.oreilly.com/design/free/pair-design.csp (英語)

この本に書かれていることをざっくりまとめると、、

1. 寄り添って一つの作業にフォーカスすること 最も大事なことは、ひとつのことに対してふたりが同時に取り組むことです。ふたりで同じデスクに座っても別々のことをしたら全く意味がない、ということです。

2. 「ジェネレータ」と「シンセサイザ」のふたつの役割に分かれて作業すること ジェネレータとは、ひたすら手を動かす(書く、描く、打つ)人を指します。ひとつの課題に対し、頭の中のあらゆるデザインパターンを引っ張り出し、描くことが求められる、と書かれています。 それに対し、シンセサイザはジェネレータの作業を見守りつつ、ジェネレータが書き出すアイデアに対するフィードバックや全体構造からそれないよう軌道修正を行う人、とあります。ジェネレータが出すアイデアに対し、素早く良し悪しをふたりで議論し、論理的なアイデアとして導くことが求められます。また、同時にアイデアが様々な要件を満たしているかを確認することも必要です。

3. 作業中はジェネレータとシンセサイザの役割を「交代」すること 色々な議論をしながら進めるなかで、シンセサイザもアイデアが浮かぶことがあるので、そのときは役割を交代して進めましょう、と書いてありました。

4. UCDの「調査」、「解析」、「ワイヤーフレーミング」、「プロトタイピング」で実施すること この本では主にUCDプロセスの課程、具体的には「調査」、「解析」、「ワイヤーフレーミング」、「プロトタイピング」でのペアリングを推奨していました。ただし、この中にはデザイナー同士のペアリングだけでなく、プロジェクトマネージャーとの共同作業や、エンジニア含めた全チームの共同作業も含まれます。なるべく早い段階でチーム全体を巻き込んでいくことも重要です。

ペアデザインの効果について

Pair Designの本には以下の効果が期待できると書かれていました。

デザインがより良くなる ・議論を重ねイテレーションが自然と回る ・脳がふたつ、視点がふたつ(ひとつよりもベター) よりよい成果物とデザイナー組織が構築できる ・ペアのほうが楽しい(ハッピー) ・得意な分野をシェアできる ・学びあえる組織 より効果的なプロセスとなる ・ジェネレータひとりだとホワイトボードでの戦いが必要ない ・早い段階でアイデアを形にできる ・ジェネレータがアイデアを口にだし共有することで、よりよいアイデアが引き出せる ・シンセサイザはジェネレータが課題から逸れないようリードすることで迷子になることを防ぐ

更にペアデザインの経験者からアドバイス

以前ラクスルのプロジェクトでPivotal Labs(以下Pivotal)の東京オフィスでお仕事をする機会がありました。そのときに、Pivotalのプロダクトデザイナー、キャニオンさんがペアデザインの経験があるとのことで、どのように進めたかのアドバイスをいただきました。

そのときのアドバイスとして印象に残ったのが以下の3点です。 ・作業を分解して、それぞれの作業に制限時間を設けること ・工数に対するROI(費用対効果)を考えてから作業を進めること(ROIに見合わないものはやらない、またはソロでやる) ・役割は頻繁に変わること

本には書かれていないことでしたので、リアルな声は非常に参考になりました。

ペアデザインの実践

今回は、たまたま社内・協力会社向けの新規システム開発の話が所属する別の部署であり、サイズ感といい規模感といいペアデザインを試すにはもってこいと思い、UXデザイナーとして急遽参加させていただきました。このように、新しい試みをなんでもチャレンジさせてくれるところがラクスルで働きやすいいいところです。

チームはプロダクトマネージャー(PM)が1名、SEが2名、デザイナーは私と柳(やなぎ)の2名。それからフロントエンド設計にはエンジニアの野口にサブとして入ってもらいました。

プロセスとしては以下の方法をとりました。

Pair Designの本にはデザインの実装までは含まれていませんでしたが、ラクスルのデザイナーは私も含めコーディング好きなので、このプロセスも対象として含めました。コーディングの作業はペアデザインというよりはペアコーディングですね。

ペアデザインの場合、ペアプログラミングと同じく同じ画面を共有し、ふたつのマウスとふたつのキーボードを用意。(残念ながら、モニターは一つしかありませんでした。)ジェネレータがキー・マウスの操作、シンセサイザはそれをみながらアイデアを汲み取りフィードバックを返す、といった形で進めていきました。

柳自身もはじめてペアリングでしたので、最初はペアリングの文化について共有しながらゆっくり進めました。はじめはわたしがシンセサイザになるパターンが多かったのですが、ふたりでひとつをこなす、という作業になれてからは自然とジェネレータとシンセサイザを交代しながら進めることができました。

あっという間に1ヶ月が経ち、デザインの実装までをほとんど問題なくこなすことができました。短期間ではあるものの成果は出せたのではと思います。

ペアデザインのふりかえり

ペアプログラミングで感じていたメリットをそのままペアデザインでも感じることができたか、柳も含めてふりかえりをしました。その時にあがったものがこちらです。

ふたりで進めることはいろいろとプラス ・どちらかが会社を休んでも作業進行がとまることはない(属人化の排除)。 ・お互いのアイデアを議論しながら論理をつめて進めるデザインプロセスは合理的で良いと感じた。 ・第三者視点でフロント実装方法を検討・実装できた。

ひとりよりもふたりのときのほうが集中力が増し、生産性もあがる ・集中力はひとりでやる時よりも断然アップ、感覚的にはひとりの作業スピードの1.5〜1.8倍で対応できた。 ・ミスがあれば注意しあうのでデザインやコードの質は高い。 ・デザイン初期の段階はルールづくりも含まれるため予想工数よりも長い時間がかかることが多い。ふたりのスキルセットを把握しながら決定する必要があると感じた。

ペアを組んだ相手から技術・手法を学び、吸収する機会が増える ・お互いを理解・尊重し、持っている特性をより生かすような進め方が重要と感じた。 ・ひとつの案件に対し、より具体的な学びのポイントをゴールとして設定するのもいいかもしれない。 ・学びを継続するには、個々の日々の勉強も欠かせない。

このように、よいメリットもありまた改善点も多くあると感じました。

上記以外にも、ペアのほうが楽しくなる、課題を終えたときの達成感がある、お互いをより深く理解し仲良くなれる、など、本にも書いてある効果も出てきました。

Pivotalのキャニオンさんがいっていた「制限時間を設ける」については、設定して試みるものの、時間をタイトに設定したせいか、なかなか予定通りに終わらないことも。。少しバッファをとったうえで設定することが必要かもしれません。ROIについては議論をする上で2人で考えるように心がけ、なるべく無駄を省くことができました。

課題点

ペアデザインを導入にするにあたり、最も大きな課題として、ひとつのプロジェクトに対しふたりのデザイナーを配置することが可能か、といったリソースの使い方問題があります。特にリソースが逼迫しているチームや企業にとっては非常に難しいと思います。上の承認を得るために、プロセスを理解してもらうためのデータや実績、ペアリングの文化に対する理解が必要になります。またもうひとつは、ペアリングで作業するための環境(2人座れる幅のテーブルと大型モニター、それぞれ慣れた入力機器)も重要で、デスクレイアウトや機器の都合上、ふたりで座れないということも考えられます。

この課題に対し、ラクスルではCTOの泉からのアドバイスを参考に段階的に落として進める方法をとりました。具体的には、初めは小さな案件で試し(こっそり)、効果があれば1日程度の案件を(その後チーム共有)、さらに効果があれば計画的に1週間の案件を(全体に共有)、といった具合に進める方法です。 また、環境も同じようにまずは空いているデスクやミーティングスペースで余ったモニターを使って進めるといったやり方から徐々によりよい環境にしていく、といった進め方がよいかもしれません。今回の案件でも自席で自前のMacBookにキーボードとマウスを接続して行いましたが、次回からはCTOの協力もあり、デザイナーが自由に使える専用ペアリングステーション(昇降型デスク)が1台導入されます!

最後に

ペアデザインにおいて、最大の利点はふたつの頭でお互いに持っていないデザインスキルを補うことができる、といった点でしょうか。デザイナーのスキルセットも現在はUXのファシリテーションやビジネス理解、ビジュアルデザインやレイアウトデザイン、そしてデザインの実装(フロント設計・プログラミング)と幅が広く、その領域も日々広がっています。しかし、その全てが完璧にできるようなフルスタックデザイナーを探すこと、もしくはその全てをデザイナーがひとりで短期間で吸収・実行することは非常に難しい話であり、また多くの企業のデザインチームが抱える課題なのではと思います。しかし、それぞれスキルセットの異なるデザイナーをバランスよくペアリングし、ふたりで課題に取り組むことでより素早く解決し、しかも学びながらよりよい成果が期待できるので、企業・組織にとっても個人にとっても有益ではないかと思いました。

中村 隆俊
プロダクトデザイナー
ラクスル株式会社 プロダクトデザイナー。Minnesota State Universit Moorhead卒業後、受託システム開発会社、エムスリー、ソニーでビジュアルデザイン、UI/UX設計、フロントエンド開発業務を経て現職。HCD-Net認定 人間中心設計専門家。

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